ヘッドホンあれこれ-1
アシダ音響 ST−3のMECAT化
アシダ音響さんの「ST−3」です。1961年(昭和36年)頃の登場ですが、2017年現在も生産、販売されている現行ステレオヘッドホンです。当初からプロ・ユース、主に放送局のスタジオユースで、知る人ぞ知るヘッドホンです。アシダ音響さんによると、現在もインカム用として放送局のみならず各所で使われているとのこと。そして近年、このクラシックなデザインが人気となり、他社から同社、ほぼ同設計の「ST−12」とよく似たデザインの民生用ヘッドホンが発売されていますが、そのオオモトがまあ、これといったところです。
私は元放送局の技術者で入局した当初はカメラマン。そのスタジオカメラには、この片耳型でマイクロホンの付いたもの(インカムヘッドセット)、MT−3Mが付けられていました。なおこのMT−3Mも現行品です。
ネット観ていて「発見」。正直、「えっ!まだあるの!!」さらにプロ用品といえど、これは消耗品であることから今でも廉価です。なつかしさのあまり、アシダ音響さんに直接問い合わせ(ホント、迷惑な客!!誠に申し訳ございませんでした。)、小売店を紹介して頂いて1機、購入しました。昔から「各社通信機器付属品」のため、1個、2個のメーカー直販などはなく、単体での小売りをなさっているのはメーカーご紹介の秋葉原の専門店さんの他、数店くらいでしょうか。
昔と変わらず、実にいい音を出します。つまり「人の声」が明確で、長く聞いていても疲れません。「プロの声用モニター」は、例えばよく言われる、エレガのDR−531、631ではなくて、コレなんです。
そしてこの機体の「分解修理」ならば、私は「任せなさい」です。新人時代に嫌というほどさせられましたから…(あの…これは消耗品なんだから、壊れたら買って下さい…これはここだ、あれはあれだと、道具をとっかえひっかえ、大汗かきながら細かく修理している私の労賃のほうがよほど高いと思うのですが…と何度、上司に言ったことか…)まぁ、この音ならば中は変わっていないだろうと思いながら、開けてみました。
おお!やはり昔のままの「スピーカ入り」です。しかしこのスピーカとこのデザイン(筐体構造)が人の声をよく再生するんです。完成されたこのシンプルな設計、まぁ、これはもう変えようがないでしょう。
このヘッドホンで音楽を聴くには、特性補正する必要があります。人の声を選択的に再生するため、600(Hz)あたりの音がよく聞こえ、うっとおしい高い周波数の音はあまり聞こえないようにされています。(人の声は、男性が500(Hz)、女性は700(Hz)にピークがありますから、これに合わせてあります。)というわけで、電気的に補正する場合、写真のように緩慢にイコライザで「逆補正」すればOKです。
どうしようかな…と思いましたが、私はもうこれを本来の通信用に使うことはありませんし、かといってコレクションとするのは全く「もったいない」話です。
何で「もったいない」のか?この音響に係る部分の設計は、かの名機「ST−31」です。ざっとした流れですが、ST−31の前にST−3からの「ST−3S」があり、これからさらに作られたのがST−31、つまり、ST−31はST−3の孫にあたり、中を変えればST−3はST−31の音になるからです。
そうだ!これを再生機器に「直結」、「涼しい顔をして」、音楽をモニターしたら、皆に不思議がられて愉快だろう。…またしてもろくでもないことを考えた私。MECATにすることにしました。
計算され尽くしているヘッドホン、難しいことは無しです。MECATでは、スピーカの後ろの穴をフェルトで塞ぎ、電極部もハンダ付けと清掃の後、しっかりフェルトで塞ぎます。そしてハウジング内部にネコの毛をたっぷり詰めて閉じるだけです。
一発OKです。再生特性は激変、高分解能のモニターヘッドホンになりました。ちょっと違いますが、これでほぼST−31の音です。これが「MECATテクノロジーの真骨頂」です。(…と言っている本人が、ホンマかいな???ですが、上2枚の写真、標準受話器と比較・校正した各周波数のポイントに嘘はありません。ST−3をお持ちの方は、はじめの写真でお試しになってみて下さい。それがほぼJIS標準受話器の音です。)まあ、とにかくこれで「お気に入り」がひとつできました。
ところで以下、よくご質問を頂くヘッドホンのお手入れと保管についてです。
湿気、皮脂や汗汚れなどがヘッドホンの寿命を縮めます。使用後は特にイヤパッド部に付着した皮脂や汗汚れを乾いた柔らかいタオルなどでパッド表面のコーティングを傷めないように丁寧にふき取ります。ひどい汚れが付着した場合などでは、できるだけ速やかに柔らかいタオルなどを水で濡らし、固く絞ってから水ぶきします。(薄いコーティングのイヤパッド部分などの場合、押すようにして=「しみ抜き」のようにして拭います。)その後、ハンガー(専用のものがありますので、できるだけそれを使って下さい。)にかけて乾燥、保管します。
紫外線や高温・空気中の湿気も嫌いますので、直射日光の当たらない乾いた屋内暗所で保管して下さい。長期保管の場合には、密封袋に入れての暗所保管をおすすめします。なお皮革部分は定期的に所定の保護液などにより、手入れをする必要があります。
新品のときからの手入れが大切で、こうするとかなり長持ちさせることができます。使用後、手入れをせずにキャリングポーチなどに収めて保管するのは最悪です。皮脂や汗汚れなどを落とし、自然乾燥させてからキャリングポーチなどに収めて保管して下さい。
しかし安価なヘッドホンの場合、イヤパッドなどは人工皮革ですから、どうしても短命(人工皮革は、これを合成したときから分解が始まりますので「使わなくても」いずれはボロボロになります。)です。表面のべたつき、ひび割れなどが生じたら寿命、交換になります。「一生モノ」のヘッドホンは、イヤパッドやヘッドバンドに本革を用いていますが、無論、これは非常に高価です。
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