Forever ELEGA
ヘッドホンあれこれ-8
 ELEGA DR−631 
捨てる、売る…ちょっと待った!
頑丈な発音体と金物。DR-531/631は「一生モノ」です。
DR−631は、そもそもは1964年の日本放送協会、FMステレオ放送開始のために作られたヘッドホンです。標準として、モノラル型のDR−631A(NHK型式 DE−1)、片耳型のDR−631AS、2チャンネル型(ステレオ型)JIS標準受話器のDR−631B、ステレオ型のDR−631C(NHK型式 DES−1)がありますが、DR−531と同様にインピーダンス、プラグ、コードもろもろ基本、「特注1品生産」「定型モノ」はありません。今ではもう入手困難な本物、世界複数の第三者機関の認めた世界最高性能のダイナミック型「標準」受話器です。
DR−631C(平成25年、当社指定仕様による製造品。Noは贋造防止のため伏せます。)
昭和38年。DR−631を生んだ東京、大田区には、世界最先端の知見と技術が集約され、戦後復興のためのモノ作りから、現在に通じる本物の「Made In JAPAN」が始まっていました。DR−631は、すなわち「高度最先端日本製品」の先駆的な製品であり、放送要求のヘッドホンの「音の品質」は、実際には、DR−631の本来の能力よりも低レベルなもので十分、オーバースペックです。総合的に観て、恐らくは史上、日本が最も良かったときと今日評されるようになっているこの時代、新幹線をはじめとする、今も他の追従を許さずそのまま使われ続けているずば抜けたものがいくつも作られましたが、すなわちDR−631もそのうちのひとつです。特に日本の放送文化の育成と発展に貢献したその業績は永久に記録されることになるでしょう。
DR−631はDR−531とともによく「上下なしのかまぼこ周波数特性」「ヒトの声に特化した音声さんのヘッドホン」などと言われますが、実はこれが「標準音」です。普通一般のヘッドホンには意図的に楽しく音楽などを聴くことができるよう、いわゆる「味付け」(機械的イコライズ)がされており、ヒトの聴覚が鈍くなる上と下の音が適度に大きく聴こえるように、また適度に響くようになど、いろいろ工夫されていますが、631は「そのままの音」です。ただしこのヘッドホンは「密閉プレッシャー型」、つまり外耳道の空気を介し、発音体の振動板が直接、鼓膜を振動させるタイプのもの、イヤパッドから「エア漏れ」があると駄目、その場合には本当に「上下ばっさりない」になりますから、本当にそう聴こえる場合にはヘッドバンドとイヤパッドを精確に調整、エア漏れなしにして聴いてみてください。大体そうしないと、高い側圧、耳どころか頭まで痛くなって長く聴いていられません。もちろん「そもそもイヤパッドボロボロスカスカ」などは「論外」です。入手困難、劣化したイヤパッドにお悩みの方はこちらをご参照下されば幸いです。
OKの装着です。イヤパッドをしっかり耳介に密着させます。 NGの装着です。たとえ新品のイヤパッドでも、髪の毛を挟むとエア漏れして、特に低音がバッサリなくなります。
とにかくDR−631は発音体として完成されたものになったことから、その後例えば、イヤパッド(イヤパッド保持板)を規定の丸型としたDR−631Bが「JIS標準受話器」(JIS T 1201、IEC 60645)となり、オージオメーター標準ヘッドホン、すなわち聴力検査など、より高度で厳密さを求める用途向けとなり、医療機器や通信用測定機器などとセットにして使われるようになりました。ちなみにDR−631Bはマイクロホンの校正に用いることができます。現在(2016年現在)でも相当している(オージオメーター用として受話器単体で相当している)ものは、独、ゼンハイザー社のHDA300のみ、DR−631が加えて有する「これ1個でOK」の「マルチユース」に追従する製品はなおも見当たりません。すなわち現在も「総合世界一」のままです。そしてDR−631は今後もこの王座を譲ることはないでしょう。なぜならば今日の測定機器用受話器の音調整は、物理的にするのではなく電気的にする、つまりディジタルイコライザなどで細かく合わせ込むのが安価で簡単になり、およそ全てのもので受話器そのものに高性能を要求しなくなった、受話器は極端な話、音が出れば何でもかまわないの程度にまでなった、すなわち「必要のなくなったものは新たに作られることはない」ためです。
けれどもそのままジャックにつなぐだけの「無電源」、それひとつで高感度にストレートな音を一斉に聞くことのできる便利な「基準受話器」が次々になくなっていくというのは残念なことであると思います。例えば原理的な再生能力、ダイナミック型はコンデンサ型に及びませんが、コンデンサ型ヘッドホンは、趣味の高級オーディオセットに好んで用いられますが、業務用として用いられることは稀です。これは「電源が必要なため」です。ヘッドホンともなると500(V)くらいの高電圧が必要であり、現場でおいそれとは使えません。このためコンデンサ型は微弱出力=低電圧、電池程度で足りるマイクロホンに多用されています。実際、今日、結果的に大したこともないちょっとした音声回路のトラブルでも、わざわざオーディオアナライザ云々をつなぎ…で、その煩わしさと要する時間に頭にきてしまうこともよくあります。ヒトの聴覚は超高性能のスペクトラムアナライザだから直接聞けば大概何でもすぐにわかる、そのほうがよほど早くて確実なことが多いのですが。
話を元に戻します。すなわち一応、DR−631Bが「基準音発生器」ですが、発音体そのものは同じであることから、その他、AでもASでもCでも音はおよそ変わりません。例えばDR−631Cの定格再生周波数帯域は概ね20〜18000(Hz)ですが、原理が違う、つまり「空気圧発生器」のため、IECなどに規定の測定法ではなかなかではなく、例えば基準マイクロホンの代わりに精密気圧計を使って測ってみると、DR−631C(内蔵インピーダンス変換トランスなし、8Ω)で、概ね1〜55000(Hz)の直線再生、ダイナミックレンジも160(dB)を超えていることがわかります。これが理論的にほぼ最終規格、倍音成分たくさんの今の高音質デジタルソースでも楽々と再生してしまう理由です。
JIS標準受話器 DR−631B(併せてIEC準拠)です。2015年末の新規製作・納入品です。

この発音体を基準としてマイクロホンの調整などができます。

「鶏が先か卵が先か」、電気音響の世界では「受話器が先」であり「受話器基準」です。

DR−631をヘッドホンとする場合、悩みどころになるのは、この基準となる空気圧差を「どう変質させずに鼓膜に送るか」で、DR−631Bの場合、この丸型の「音響カプラー」にどのイヤパッドをどう取り付けるかが勝負になります。

これはDR−631A、AS、Cなどでも同じ、ハイレゾソースの登場によりいよいよ考える必要が生じてきたため、ひとつの提案があります。こちらをご参照下されば幸いです。

私の個人持ちDR−631Cです。昭和56年のメーカー直オーダー品です。局の倉庫整理、局員への払い下げ、平成になってから安く頂戴しました。とはいえそれから20年以上、毎日のように使ってきましたが、今もなおどこにも異状はなく、きれいなままです。

音声技術者にとって、ヘッドホンは「商売道具」を越えた「相棒」、こまめに手入れをして大切に使います。またDR−631Cは、例えば新人放送局員だと、昔からひと月分の給料の半分が飛んでいくほどに高価、しかしそれだけつぎ込んでも調達するもの(といっても、今も昔も「慢性金欠病」の私は貸与品で長く頑張りましたが…)ですから、思い入れもひとしおです。大切に扱えば50年の実使用に耐える、きちんと保存管理すれば100年は動態状態を保つ設計のものであることから、特に個人持ちのものはまだ大体、新品同様の状態で使われている、あるいはご家族や親しい方に譲られ、保管されているものがほとんどだと思います。

私ももう年齢から考えて、ミキシングエンジニアができるのはあと数年のこと。その後は宝の持ち腐れになります。うちの子が欲しがっていますので、そろそろ順に譲っていこうと考えています。

DR−531/631両耳型ヘッドバンドの革がボロボロになってお悩みの方は以下にご相談下さい。新規製作できます。ただし交換はご自分、自己責任で実施下さい。R側のリベット4本を抜くと交換できます。
革研究所広島店さま
DR−531/631のイヤパッドがボロボロになってお悩みの方は以下のぺ−ジをご覧下されば幸いです。ご自分で製作・交換できます。ただし製作・交換はご自分、自己責任で実施下さい。
ELEGA DR-531/631用イヤパッドの検討
INDEXに戻る
 

© 2017 HIRAKAWA WORK INC. ALL RIGHTS RESERVED.
*iphone アプリ 開発
*ホームページ制作