Forever ELEGA
ヘッドホンあれこれ-10
 再会!私の「旧友」 ELEGA DR−631
捨てる、売る…ちょっと待った!
頑丈な発音体と金物。DR-531/631は「一生モノ」です。
ぼんやり「実験用ガラクタ部品」を探すため、インターネットオークションを観ていたところ、DR−631Cが出品されていました。

買う気は全くありませんが、後学のため細かく写真を観てと…う〜ん…経年の割に程度がよい。これはもしかしたら局マスターからのものじゃないかな…。

さらによ〜く何枚も写真を眺めます。

「ん?んん!?このハウジングとアームの傷には覚えがあるぞ…製造番号は…えっ!これはもしかしたらもしかして…」

そうです。イヤパッドは使えないさらに古いものがつけられていましたが、このDR−631Cは私が放送局員時代に貸与されていたものにまず間違いありません。若いとき、共に苦労した「旧友」です。

回りまわって何と…これは「例外」。壊れていてもかまわない。意地でも落札しないと!

競争になり、少し高くなってしまいましたが、何とか6000円強で落札できました。ちなみにDR−631はこんなヘッドホンです。

届いてさっそく確認。やはり「絶対間違いなく」私の使っていたDR−631Cでした。

何で「絶対間違いなく」なんだ?何のことはない、左側発音体の裏、イヤパッドで隠される部分に「私が書き込んだ私の文字」がそのままはっきり残っていました。実はこれ、昔の「盗難対策」。DR−631Cは昔から人気機種、ロケなどで盗難に遭うことが多く、各自、わからないところにこっそり「秘密の言葉」を書き込んでいたものです。やはり小学生の頃にしつこく教えられた「自分の持ち物には自分で名前を書きましょう。」に勝るものはないと…

この機体は昭和48年製のちょっと古いもの。でもこれ、私に渡されたときには「箱入り新品」だったが…あ、思い出した。私はラジオ制作だけではなくラジオマスターも回線室も兼務、「やっぱりハイ・インピーダンスの631を下さい。」と言ったから、わざわざ倉庫から古い予備品を出してきてくれたのでした…。

幾年になるかな…お前さんもくたびれたろう。本当に長いおつとめ、ご苦労様でした。

LR発音体X線検査。どちらもきれいなもの。

絶縁・耐電圧試験、OK。DCR測定、OK。よし…音入れ。

1kHzインピーダンス、左右共に定格内。音響試験、左右共に定格内。最大入力試験、OK。何と「合格」です。

何だお前、元気じゃないか。よっしゃ。きれいに直してやる。発音体が元気なら他は何とでも修理できる。任せとけ。再びいい音、聴かせてくれ。冥土に往くときに一緒にと思ったんだが、何のことはない、これだけ元気だったら、俺のほうが先に往くことになるから、そのときがきたら見送ってくれ。
ところが、いざばらしてみると…

きちんと手入れされていて、まあ、やらないといけないところは3Cプラグとイヤパッドの交換ぐらい。金物には錆ひとつなく、ヘッドバンドの革もきちんと手入れされており、交換の必要はありません。必要なのは全体のクリーニングだけでした。

DR−631は放送局でも大切に使います。「プロ用のDR−631Cはハードに使ってポイ!」ってのは世間で言われているだけのこと。何せ高価なもの、しかも昔からその多くが個人への「貸与品」ですから、壊す、無くすなんてことをしたら、「顛末書」、結果、「お前の扱いが悪い!」認定されたら「新品弁償」です。

この機体はまだまだ十分に使えますが、たまたまこれがハイ・インピーダンス機で、新しい送出システムでいよいよ使えなくなったことから放出されたというわけです。

コードとヘッドバンドを洗浄、金物のくもりをとり、イヤパッドと3Cプラグを新品に交換、ヘッドバンドの革に新しい油と保護剤を浸潤させ、形を整えて乾燥させると、新品の輝きをとり戻しました。無論、最後に昔の自分の名札を復元し、ヘッドバンドの名札入れに入れて完成させました。

昔と変わらない「間違いのない音」を出してきます。トランスでビシッとインピーダンスを合わせると、線路での外乱=飛び込みノイズがキャンセルされることなどもあり、トランスなしの8Ω不平衡機よりも「精密な音」です。

何とも不思議なめぐりあわせと思われるかも知れませんが、業務用機器は生産数が少ないため、こういうことは結構あります。とにかくこれで個人持ちの8Ω機と合わせ、放送局時代のDR−631Cが全て私のもとに揃いました。

家のガラクタばかりの倉庫をひっくり探すと、奥のほうから「空箱」が出てきました。空箱には、私への「永久貸与」のシールがべたっと貼ってあります。
空箱の表書き、空箱の中にあった検査票、そしてこのDR−631Cの銘板が完全に一致。ここでも間違いないことを確認、新品の袋を加えて「フルセット」にしました。
● その後・・・久々に実力発揮。「音声回路の聴診器」

もうお互い現場で使われることはない、使うことはないの「年寄り同士」でぼちぼち楽しんでいたのですが、先日、思わぬ「現場復帰」になりました。

あるラジオ局様、業務用レコードプレーヤの修理ご依頼です。
この頃はアナログレコードの音を懐かしむリスナーの声が多いとか、もう40年も昔の業務用レコードプレーヤの本線接続と使用が必要になっているとか。
何せ古い業務用レコードプレーヤ、どの機体もどこかがおかしい、しかし不良箇所を特定できず、また製造社のサービスも当然もうないことから「お手上げ状態」とのこと。そこで「こいつでいける」、DR−631持参で久々にラジオ副調整室に入りました。
今のぴかぴかの機材の中に複数の古びたレコードプレーヤ。無論、もうとうに期待設計寿命を経過しており、不具合は当たり前です。この製造社では実際、既にその博物館に収蔵しているほどのものです。つまり概ね4〜5世代も前のもの、これを「現役使用」するわけですから簡単な話ではありません。しかしこの時代のものならば、私たちはどの機体でもその機械構造から電子回路までほとんど暗記していますから、DR−631で直接「変な音」を聞けば、すぐに「どこ」とわかります。モニタジャックにDR−631を接続してテストレコードをかけてみたところ、全機体、不良箇所を一発で特定することができました。電源のコンデンサ、各基板のコンデンサ容量抜け、半導体故障、蛍光灯ノイズ、ターンテーブル回転数検出磁気ヘッドの汚れ、針圧不足、軸受けぶれ、レコードプレーヤと調整卓を結ぶ回路のインピーダンス不整合、ノイズフィルタの不良…いろいろありましたが全てそれぞれに特有の異常音であり、10kΩのDR−631はそれを全て明確に出力。そしてそれぞれの部分を調べると全て当たり。当初予定の半分、お客様に驚かれるほどに短時間で全機、修理と調整を完了させることができ、当然その分、料金もお安くできました。
そもそも10kΩのDR−631は、増幅回路や電話回線などの状態を耳で知るための「測定用モニターヘッドホン」であり、放送用、AとCタイプでは規定−60(dB)のノイズを「明確に弁別再生する」能力を持ち、どこからどのように来ているノイズであるのかまではっきりわかるようにされています。すなわち10kΩのハイ・インピーダンスモデルは今のように片手に収まる安価な小型測定機など「未来の夢」、高価、重い、大きい、よって持ち出しなどとんでもないの頃、どうやってドタバタ、1秒でも早くの放送現場で的確にトラブル原因を突き止め、迅速対応するかの課題に応えた知恵の結晶です。1ヶ所だけの不良ならば、今のオーディオアナライザでもすぐに見当がつきます。しかし複数箇所の不良とそれによる不具合になるとなかなか難しい。ここはやはり今でもこのヘッドホンのものでした。
DR−531/631両耳型ヘッドバンドの革がボロボロになってお悩みの方は以下にご相談下さい。新規製作できます。ただし交換はご自分、自己責任で実施下さい。R側のリベット4本を抜くと交換できます。
革研究所広島店さま
DR−531/631のイヤパッドがボロボロになってお悩みの方は以下のぺ−ジをご覧下されば幸いです。ご自分で製作・交換できます。ただし製作・交換はご自分、自己責任で実施下さい。
ELEGA DR-531/631用イヤパッドの検討
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