Forever ELEGA
ヘッドホンあれこれ-7
ELEGA DR-531
捨てる、売る…ちょっと待った!
頑丈な発音体と金物。DR-531/631は「一生モノ」です。
DR−531C(1961年製 5kΩ。後年、キャノン5Pコネクタ化、ヘッドバンド等交換。当社保管品。)
DR−531C(後年の1994年製 8Ω。1964年に青白さや(青白ハウジング)にされた。当社保管品。)
DR−531の開始は戦後間もない1953年、NHKとの共同開発、NHKまた新電波法下で新たに設立された各民間ラジオ放送局の需要を受けてのものでした。現在のラジオ、すなわちNHKも含めて「電波の民間開放」がされたのは1951年、1951年9月1日、中部日本放送(JOAR)が日本初の民間(商業)ラジオ放送局として本放送開始、それまでレシーバセットは国(占領軍)の許認可対象とされており、メ−カ−が競争して自由に開発、発表、販売できるものではなく、DR−531は藤木電器初、またダイナミック型の量産ヘッドホンとして恐らく日本初のものでした。事実、藤木電器はこれ以前はマグネチック型のヘッドホン(通信用)を作っていました。DR−531の「本姿」はDR−631と同じく「発音体」であり、ヘッドホン自体に「定型モノ」はありません。今ではもう入手困難な本物の業務用モニターヘッドホンです。
DR−531の凄いところはその発音体のずば抜けた完成度です。当時のNHKのAM2波ステレオ放送対応のため、当初からステレオ型が用意されましたが、正直、当時はおよそ不要な、今の高級ヘッドホンも真っ青の広帯域再生、高分解能、十分な音量、すなわちいきなりそのはじめから今日にまで通用する製品として登場しました。実際その後、1992年以降のAM1波ステレオ放送にも「そのままで」対応、対応できない(再生しきれない)のは最新のハイレゾ音源のみ、そしてようやくDR−531は時代遅れのものとなり、その役目を終えようとしています。残念ながら1953年もしくは1954年当時のDR−531の現物は残っていませんが、保存している最も古い1958年製のもので測定してみますと、既に後年のものと変わらない特性であり、これに使用されている材料からしてもこれでスタートしたと推定するのは容易、驚かされます。当時まだDR−531を鳴らし切る録音媒体、放送、通信は存在していなかったのに「将来を見越して」作られたのです。さらにはその耐久性、写真の1961年製のDR−531C、ヘッドバンド、コード、イヤパッドは平成のはじめに全交換していますが、発音体はそのまま、この頃にはヘッドバンド、コード、イヤパッドともに材料が大幅に改善されており、発音体の製造から半世紀をとうに経過した2017年現在も現役、全体としての痛みもありません。
DR−531は外見上、DR−631と変わらず、銘板を観ないことには区別がつきません。その後開発されたDR−631が有名なため、この「人気」に隠されがちですが、中身がDR−631とは全く異なる「量産型」であることから、DR−631のその後の展開どころではなく、民生用から医療用各種特別機にまで広く展開されました。
DR−531のドライブユニット(1956年製。本体可動、過大入力によりトランス断線。)です。振動板は本来、半透明ですが、この個体、喫煙環境で使われたため、変色しています。本体は8Ω、これに必要に応じてインピーダンス変換トランスが付加され、鉄のハウジングに封入されます。今のダイナミック型ドライブユニットと変わらないオーソドックスな構造ですが、ダイナミック型受話器を安定した品質で量産できるものに徹底的に改良、「いきなり完成」させた、そして世界的にこの構造が認められ、今も変わらない、変えようがないところが凄いのです。その後変えられたところといえば、強力なサマリウムコバルト磁石の実用量産化により、後ろの飛び出しを無くしたことだけです。実際、「せっけん箱」と呼ばれた独特のデザインのハウジングは、まだ脆弱な永久磁石しかなかったことからのものであり、量産サマリウムコバルト磁石の登場以降、藤木電器はいち早く「薄型軽量ヘッドホン」を主力製品としています。大体、1953年当時の量産型受話器の主力は電磁型=マグネチック型であり、こんな安定品質かつ高音質を一気に実現したダイナミック型量産ドライブユニットはありませんでした。当初のものから航空機の技術を応用した無駄・妥協一切なしの精確な設計と組立て、さらに極めて耐久性に優れた材料を使用していることから、丁寧に管理・使用すれば50年を超えて使えます。なおこのドライブユニットは使用材料の改善が続けられ、最終的にその構造だけが残されました。特に平成に入ってから生産されたものの耐用期間は、よくわからないないほどに長期です。
DR−631のドライブユニット(1977年製。衝撃による破壊故障。)です。同じく当初のものから丁寧に管理・使用すれば50年を超えて使えます。DR−531とDR−631の音はよく「同じ」あるいは「少し違うだけ」と言われますが、ドライブユニットの構造が全く違うことから全く違う音です。とは言え、DR−531のドライブユニットの完成度が非常に高いことから、昔のアナログ音源での違いはほとんどわかりません。今のハイレゾ音源であればはっきりわかります。本体は8Ω、これに必要に応じてインピーダンス変換トランスが付加され、鉄のハウジングに封入されます。これはもう文句なしのダイナミック型受話器の「原器」そのものであり、振動板裏側の給排気を2つのエアバルブで精密に調整、ボイスコイル位置も永久磁石の磁束と精密に合わせ、所定電流で所定空気圧が振動板前面に発生するようにされます。広い可変範囲、2つのエアバルブの開閉程度により「キンキン音」から「ドンドン音」まで自在に作ることができるようにされています。すなわち客観的根拠をもって「基準音発生器」と言えるものです。よってヒトへの適用=必要はせいぜい聴力検査くらいのもの、本来は、補聴器、騒音計、マイクロホンその他の「集音器製作・校正」に欠かせないものです。一般の「根拠曖昧でよい」、「ヘッドホン」ではありませんから、これと比べられても困るもの、そして最高峰のこれを「格下の」ヘッドホンに使えば「モニターヘッドホンになる」のは「当たり前」、モニターヘッドホンへの「格下げ使用」の結果がDR−631でした。実際、当初「わかる人にはわかる」で、藤木電器で「ダイナミック型受話器」と称して販売していたのは厳密にDRー631のみ、他は「イヤホン」、「ヘッドホン」と称して販売していました。なおこのドライブユニットも使用材料の改善が続けられ、例えばその永久磁石は最終的にネオジウム磁石とされ、その構造だけが残されました。特に平成に入ってから生産されたものの耐用期間はよくわからないないほどに長期です。このドライブユニットは研究用また工業用、すなわち国産各種音響試験機の発音体として広く用いられました。
本職でも「631でミキシングができるとは信じられない。」という人がいますが…生音をちゃんと勉強していますか。意図的にくせをつけてある普通一般のヘッドホン1本で涼しい顔をして間違いなくプロのミキシングができるのは、ヘッドホンのくせを知り尽くしているベテランミキサーだけ。と言っても、もはや631の入手は困難、どうしてもとなれば、海外製の相当品(2016年現在、ひとつだけ「まあ何とか」相当しているものがあります。)を使うか、ディジタルイコライザなどを使い、電気的に補正して使うくらいしかありません。
当社で動態保存している昭和33年(1958年)11月製造のDR−531AS。入力インピーダンスは5kΩ。まだ銘板は旧式の共通使用型です。

イヤパッドは当初のものは天然ゴム製のため保存困難、昭和47年の同デザインの合成ゴム製の純正部品、またコードも安全のため、後年の純正部品としてあります。

筆記体のロゴは下の1964年6月製造のDR−531に使用されていますが、BTS発効時、すなわち1964年8月製造のDR−631には既にみられないことから、DR−631のスタートに合わせて改められたようです。

BTS発効直前(1964年6月)製造のDR−531C。これが両耳型DR−531の原型です。旧型、ボルトばね押し止め型ヘッドバンドに黒エナメル塗装の発音体です。C型=ステレオ機の「青白塗装」の発音体は1964年8月のBTS発効後からです。すなわちヘッドバンドはボルトロック型とされていないため発音体の固定が甘く、さらに最悪は使用中に発音体がヘッドバンドから抜け落ちてしまう問題があります。BTSでこの問題が修正され、DR−631のスタートとともにDR−531A、B、CのヘッドバンドはDR−631A、B、Cと同じものにされ、この旧型のヘッドバンドは廃止されました。なおこの旧型のヘッドバンドは1953年以前よりあり、藤木電器の初期、すなわちダイナミック型レシーバ以前のマグネチックレシーバ、TR-31などにも使われています。この機体の修理記事はこちらです。
DR−531/631両耳型ヘッドバンドの革がボロボロになってお悩みの方は以下にご相談下さい。新規製作できます。ただし交換はご自分、自己責任で実施下さい。R側のリベット4本を抜くと交換できます。
革研究所広島店さま
DR−531/631のイヤパッドがボロボロになってお悩みの方は以下のぺ−ジをご覧下されば幸いです。ご自分で製作・交換できます。ただし製作・交換はご自分、自己責任で実施下さい。
ELEGA DR-531/631用イヤパッドの検討
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